ポリオ根絶:完遂への決意

次期ロータリー財団管理委員でパキスタン・ポリオプラス委員長を務めるアジズ・メモンさんは、ポリオ根絶を成し遂げようと決心した理由について、次のように語っています。

「その女性の頬には涙が伝っていました。その顔は、まさに苦痛と疲労感そのものでした。その女性は11歳の少年を胸に抱きかかえていましたが、その子のやせ細った脚はだらんとぶら下がり、彼女は歩きづらそうにしていました。その光景に言葉を失った私は足を止め、その男の子に一体何があったのかと彼女に尋ねました。すると女性は涙を拭い、自分の6人の子のうち、3人がポリオによるまひに苦しんでいると打ち明けました」

ポリオに苦しむ子どもを初めて見た時を回想するメモンさんは、この経験が自分の人生を一変させたと言います。あれから22年、メモンさんはパキスタンでポリオ根絶に取り組む最も影響力のある一人として活動しています。

22年間、ワクチンボックス20万箱、ポリオ根絶への調達資金は数百万ドル

アジズ・メモンさんは、パキスタンにおけるロータリーの活動について、その本質を熟知している人物であると言えます。パキスタン・ポリオプラス委員長で、インターナショナル・ポリオプラス委員も務めるメモンさんは、ポリオウイルス根絶に対する取り組みが評価され、これまで数々の賞を受賞しています。10月にはパキスタンで初となる次期ロータリー財団管理委員に選出されました。

パキスタン・ポリオプラス委員会でのこれまでの自身の取り組みを誇りに感じているメモンさんは、次のように述べています。「パキスタン・ポリオプラス委員会はこれまで20万箱以上のワクチンボックスを確保するための資金を提供し、このボックスはパキスタンのEPIプログラム全体で活用されています。また、常設の国境検問所におけるワクチン投与活動を支援し、常設予防接種センターにおける定期予防接種の環境も改善したほか、女性の医療従事者による基本的医療もサポートしてきました。さらに安全な水が使えるようにするための太陽光発電の浄水場を設置して家庭の生活の質を改善したり、識字率の低い地域でオーディオブックを活用した教育にも取り組んでいます。ロータリアンはウラマー(イスラム教学者)と協力して、学校や大学、地域社会でアドボカシー活動もしています」

メモンさんたちによる支援の下、国際ロータリーはパキスタン政府やWHO(国際保健機関)、UNICEF(国連児童基金)を通じて数百万ドルを拠出し、パキスタンにおけるポリオ根絶を後押ししています。

このプログラムに携わって22年間、ポリオ根絶の取り組みに大きく貢献しているメモンさん。

歴史をつくるチャンス

ポリオウイルスは今もアフガニスタンとパキスタンに存在しており、ポリオ根絶に向けた世界的な取り組みには未だ課題が残されています。この難局を打破するには、集中的かつ革新的で粘り強い努力が必要とされます。

「世界からポリオを根絶するという国際ロータリーの使命は私たちの最優先事項です。ロータリーはこの使命を推し進め、ポリオ常在国の政府を支援し、この恐ろしい病の根絶を目指しています。天然痘に続き、ポリオが世界から根絶されるという歴史の一部になれることは光栄」とメモンさんは言います。

一方で、ワクチン接種を躊躇する人がいることや、誤った情報が流れていることが、パキスタンでのポリオ根絶活動において今なお残る課題であると改めて指摘します。「ソーシャルメディア上で拡散されている誤った情報が、ポリオワクチンに対する恐怖心を生み出しています。安全性への懸念が依然として根強く残っている部族地帯もあり、説明責任も場所によっては十分に果たされていません」と説明します。

このため、ロータリーは「ワクチン接種への躊躇」という問題に対して、革新的な戦略をサポートしています。「この問題は巧みに対応する必要があります。ロータリーは4州全土でウラマーや宗教学者と協力し、ワクチン接種に対する印象を良くするために取り組んでいます。なかでも、ソーシャルメディアはワクチンへの誤解を解く上で非常に役割を果たしています」とメモンさん。

またロータリーは、医療費を支払えないポリオサバイバーの心強い味方でもあります。「ロータリーはWHOに補助金を提供し、ポリオ患者のためのリハビリプログラムをサポートしています。カラチ・ロータリークラブも『Artificial Limb Center(義肢センター)』と呼ばれる地域社会のプロジェクトに資金を提供しています。このプロジェクトでは、ポリオ患者やポリオにより手足の切断を余儀なくされた人、事故でけがを負った人に対し、義手や義足、キャリパー(足の矯正具)、松葉づえ、車椅子を贈りました。

ポリオのないパキスタンを夢見て

パキスタンにおけるポリオ根絶は長い道のりを歩んできましたが、メモンさんは残された課題も乗り越える意欲を燃やしています。「『ポリオのない世界を目指す奉仕賞』に仲間たちを推薦することで、彼らの意欲を引き出しています。プロジェクトや活動を月刊ポリオプラス・ニュースレターで紹介し、毎年開かれる地区大会でも彼らの取り組みを称えています」とメモンさん。

ポリオのない国を実現することこそパキスタンの夢です。インドでポリオ根絶が達成され、世界各地のロータリアンが歓喜した時の気持ちを振り返り、「インドでポリオを根絶できたことは本当に喜ばしいことでした。パキスタンもポリオ根絶を実現できるという希望を与えてくれましたし、その夢はもうすぐそこに迫っています」とメモンさんは話します。

「ポリオ根絶に向けた世界的な動きが生まれた時から、ロータリーは既に取り組みを始めていました。私たちがここで歩みを止めてしまえば、ポリオが再び蔓延するかもしれません。ロータリーはこれまで十分過ぎるほど努力し、進展を成し遂げてきた実績があります。だからこそ、ポリオ根絶という目標を達成せずに私たちがこの課題から手を引くことはあり得ないのです」

すべての子どもにワクチンを投与するには、皆さんの力が必要です。ビル&メリンダ・ゲイツ財団からの上乗せにより、ロータリーへお寄せいただいくご寄付は3倍になってポリオ根絶活動に生かされます。ご寄付はこちらから。

この記事は世界ポリオ根絶推進活動(GPEI)サイトに掲載されたものです: polioeradication.org

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ハミド・ジャファリ(WHO東地中海地域ポリオ担当ディレクター) | 3月. 25, 2024